【小説】夜を游ぐ

 

 

 受験勉強に倦み、予備校をサボって僕がいたのは、夜の雑踏だった。

 

 人とぶつかりそうになりながら、当て所なく歩く。目的地も将来も。

 

 そうしたら、月明かりの下で誰よりも上手に、人混みをかき分け歩く人の姿が目に入った。

 

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 ――それはまるで、夜を游いでいるかのようだった。

 


Story by 鈴倉佳代
Photo by バジル氏

初出