【小説】紅葉の木の精

 

 

 紅葉の写真を撮っていたら、小さな女の子に話しかけられた。

 

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 曰く、紅葉達が綺麗に見える角度を知っているという。

 

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 言うが早いか、軽い身のこなしで木に登っていく。

 たまには人物写真も悪くないかと思い、紅葉を背景に様々なポーズをとった女の子をフィルムがなくなるまで撮影した。撮影は順調に進んだ。

 

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 カメラの存在は知っていたものの、向けられたのは初めてで嬉しかったから話しかけた、と撮影の合間に彼女は言う。

 別れ際、現像した写真を見せにくることを約束する。

 帰宅後すぐに現像してみると、

 

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 そこには紅葉だけが綺麗に写っていた。

 


Story by 鈴倉佳代
Photo by KuMi

初出