【小説】猫みたいな君と雨
閑静な住宅街の片隅に、君はいた。立ったりしゃがんだり、曇り空を見上げたり。差している日傘をクルクル回したりもしている。
その様子が、なんだか猫みたいだな、と微笑ましい気持ちで思う。
ポツリポツリ、と雨が降り出した。
――おっと、いけない。見入っている場合じゃなかった。道に迷って大幅に遅刻していたのだ。その上、濡れ猫にさせるわけにはいかない。
大急ぎで走り寄り声をかける。
「遅くなって、ごめん!」
「びっくりした、大丈夫だよ。猫を眺めて待っていたの。ほら、あそこ。雨で濡れないといいんだけど!」
Story by 鈴倉佳代&藤淑花
Photo by 大友せつな