【小説】大阪の夜は明るい
大阪の夜は明るすぎて疲れる、と彼女は言った。
彼女に付き合ってもらって大阪を観光した後、わたしが泊まっているホテルへと戻る前に小休止していたとき。
光を目に入れること自体がしんどいらしい。確かに、今日はずっと一緒にいたのに一度もスマホを見た様子がない。連絡も、いつも電話が多い。
「スマホ、捨てたいんだよね」
考えが声に出ていたのだろうか。鞄のなかから取り出したそれを、今にも振り被ろうとする。
「ちょ、ちょっと待って!」
慌てて止めに入る。彼女と連絡を取る方法は、これしかないのだ。
「さすがに捨てないよー、今はまだ」
わたしの慌てぶりが可笑しかったのか、笑ってスマホを鞄に仕舞いながらそんなことを言う。
「これがなきゃ、連絡取れないもんね」
遠方に住んでいるわたし。
「星が見えない夜はなんのための夜か分からない。星が見える場所に住みたい。よくみえるところに」と彼女は一気に言った。
それを聞いて、帰るときに言おうと思っていたことを今、言うことにした。
「じゃあ、こっちに来る? 星がよく見えるし、ほら、いつでも話せるし、さ」
Story by 鈴倉佳代&藤淑花
Photo by なおなお🎃